2015.03.01

補綴物(被せ物)が合っていないときは?


『もう一度型取りをさせて下さい。
 

補綴物(被せ物)が完成し、
患者さんにその補綴物(被せ物)を
入れるときに、
その日、歯が入ると
思っている患者さんの期待を
裏切ってしまうことがあります。

大変申し訳ないのですが、
補綴物(被せ物)が合っていない場合には、
もう一度お時間を頂いております。

補綴物(被せ物)が合っていないとは、
辺縁(マージン)が合っていないこと、
色があっていないこと、
隣との歯の接触具合が弱いこと、
咬み合わせが大きくずれていること、
形が明らかにおかしいことなど、
色々とあります。

明らかにおかしい場合は
やり直しは当然なのですが、
患者さんにこれで良いと
言われたときには
ご理解を頂くために十分に
ご説明しなければなりません。

やり直しに関しましては、
もう一度型取りをするご負担や、
再度来院して頂くご負担なども
ありますので、
自分自身の好みや
エゴだけで決めるわけにもいきません。

さらにご予約頂いていた時間も延長し、
次のご予約を頂いている患者さんを
お待たせしてしまうことにも
なりかねません。

ただそのとき自分に提供できる
ベストを尽くすべきだと考えますので、
やり直しした方が良いと思えば
そのようにお伝えさせて頂き、
再度お時間を頂いております。
(そして次のお待たせした
患者さんにも謝ります。)

ではどんな時にやり直しを
させて頂くかの例ををお示しします。

右上側切歯の
硬質レジン前装冠(保険適応)の場合です。

妹尾_真吾_2

 

右上側切歯

右上側切歯

 

左上側切歯

左上側切歯辺縁(マージン)の不適合と色が他の歯に比べて少し白いのが分かります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マージンとは補綴物の
縁のことを指しています。
ここでは、硬質レジン前装冠の縁と
歯肉に隙間が認められます。

左上側切歯の硬質レジン冠も
依然に当院で作製したものですので、
それと比べても白く、
さらに辺縁(マージン)部が
合っていないのが分かります。

患者さんからは、
気にならないからこれで良いと
おっしゃって頂きましたが、
ご説明をしてもう一度
やり直しをさせて頂きました。

前歯部なので、
審美的な問題と、
辺縁(マージン)部が不適合だと、
そこにプラークが溜まりすい、
セメント溶出が起こりやすい
などにより、
虫歯や歯周病が
進行しやすくなる可能性があります。

またこの被せ物(硬質レジン前装冠)の
維持期間も短くなる可能性が
ありますので、
修正させて頂く
ことをご説明しました。

やり直し修正したものが次の写真です。

妹尾_真吾_11

修正後

 

右上側切歯(修正後)

右上側切歯(修正後)

右上側切歯(修正前)

右上側切歯(修正前)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

修正前に比較して修正後は、
辺縁(マージン)部の適合と、
色合いが改善されました。

この辺縁(マージン部)の設定に
ついてですが、
前歯では、
審美性の観点から、
歯肉縁下0.5mmあるいは
正常な歯肉溝の1/2に設定
するようにしています。

歯肉縁上になると、
修成前のように
歯肉と
硬質レジン前装冠の間に
隙間があるように
見えてしまいますので、
審美性が落ちてしまいます。
歯肉縁下にマージンを設定すると
色々な難点が増えますが、
その一つとして型取りをするのが
難しくなり、
やり直しを
しなければならない可能性が
高まります。

そうならないように
一つ一つのステップを
きちんと行うように心掛けています。

ただ、
もし完成した補綴物(被せ物)が、
その歯や補綴物の予後や審美性に
関わる場合には、
再度お時間を頂き
修正させて頂くことがあることを
ご了承頂けたら嬉しく思います。

 

参考文献)

齋藤 淳,佐藤 亨:クラウンのマージンはどこに設定すればよいのか教えてください.歯科学報,112(5): 647-650,2012

Newman MG et al. ed):Restorative interrelationships. Carranza’s Clinical Periodontology, 11th ed. Elsevier Saun- ders, St. Louis, p.610~614,2012.

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