2015.02.02

詰め物や被せ物はどのくらい長持ちするのだろう?

『虫歯を治療したから
もうなりませんよね・・・』

 『詰め物や被せ物は
一生使っていけるんですよね・・・』

 治療後の患者さんに
このように言われることがあります。

 このような患者さんの期待に
できるだけ応えるために
私達は日々精進しています。

 しかし残念ですが、
現在のところ、
歯科医院で行われる治療の
3分の2はやり直し治療だ
と言われるほど、
一度
修復治療を行った後に、
何らかのトラブルが発生
しているのが実際の所です。

 だからこそ、できるだけ修復治療を
するような状況にならないように、
私達は努力したいのです。

 先日、修復治療をするか
どうかを判断するときには、

 『もしこのまま何もしなかったら、
どんなことが起こるのだろうか?』

という問いかけを自分自身に
することが重要だと書きました。

 その問いかけにより、
その患者さんにとって、
修復治療を選択した方が
ベネフィットが大きいと
判断した場合に修復治療に入ります。

 実はもう一つ、
重要な問いがあります。
それは、

『修復治療を選択した場合には、
どんなことが起こるのだろうか?』

ということです。

修復治療を行った場合に、

患者さんは冒頭のような期待を
持っていることがあります。

 『虫歯を治療したから
もうなりませんよね・・・』

 『詰め物や被せ物は一生
使っていけるんですよね・・・』

 修復治療がどのくらい長持ち
するのかについては、
個人差が非常に大きいので
一概には言えませんが、
一般的な
臨床疫学的データ(エビデンス)は
知っておく必要があります。

 自身の修復治療の良し悪しを
知ることや、
患者さんに過度な
期待や不安を抱かせない意味でも、
一般的な臨床疫学的データ
(エビデンス)は有用です。

 上記のような問いに答えるために、
札幌市内の一歯科医院で行われた、
修復物の生存期間とそれに関わる
要因を調べた研究をご紹介します。

 詳しいことをここですべ
て記載することはできませんが、
平均生存期間(長持ちする期間)では、
長いものから

メタルインレー(金属の詰め物)
:3,804日(10年ちょっと)

コンポジットレジン
(白いプラスチック性の詰め物)
:3,532日(10年くらい)

メタルクラウン(金属の被せ物)
:3,276日(9年くらい)

メタルブリッジ
:2,557日(7年くらい)

 

 10年生存率
(10年後に維持している割合)では、

 メタルインレー(金属の詰め物)
:67.5%

コンポジットレジン
(白いプラスチック性の詰め物)
:60.4%

メタルクラウン(金属の被せ物)
:55.8%

メタルブリッジ
:31.9%

 そして、再治療の原因としは、
二次う蝕(虫歯が再発すること)が
多いとされています。

 つまり、修復物は永久的ではなく、
さらに長持ちしない原因としては、
二次う蝕(修復物の下で虫歯になること)
が原因の場合が最も多いということを
頭に入れておく必要があるということです。

 この臨床疫学的データが、
個々の患者さんにすべて
あてはまるわけではありませんし、
またあくまで一般的な保険適応内の
治療成績を示しています。

自費診療によるセラミックスなどの
修復治療成績はこの成績よりも
良い場合がほとんどです。

 

参考文献)

角舘直樹 著:歯科診療に基づく研究・英語論文執筆ガイド.

青山貴則,相田 潤,竹原順次,森田 学:臼歯部修復物の生存期間に関連する要因,口腔衛生学会雑誌.2008;58:16-24

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