2015.02.20

根尖病変の悪化と改善を考える

『歯茎が腫れて膿みが
出てくるのですが・・・。』

定期検診を受けて
頂いている患者さんでも、
そのような状況になって
しまうことはあります。

歯茎が腫れる原因は
様々なものがありますが、
根尖病変(歯の根の病気)の
悪化によるものも少なくありません。

しかし、根尖病変の悪化の予測は
非常に難しい場合があります。
次のような例を示します。
左下6番(第一大臼歯)の経過に
注目してください。

2007年5月に撮った
レントゲン写真では、
近心に虫歯が認められています。

田村_雄輔_1

2009年10月のレントゲン写真です。
修復の再治療が行われ、
メタルインレーの範囲が
広くなっているのが分かります。

田村_雄輔_2

2011年5月のレントゲン写真です。
若干歯根膜腔の拡大が
あるように見えますが、
明らかな虫歯は認められず、
患者さんの自覚症状も
ありませんでしたので
経過観察としていました。

田村_雄輔_3

2012年6月のレントゲン写真です。
近遠心根尖ともに、
陰影を認めています。
この時点で患者さんの
自覚症状(歯肉腫脹と排膿)も
出現していました。

田村_雄輔_4

これらの経過を診ると、
2007年から2012年の
約5年間に虫歯はどんどん進行し、
根尖病変を引き起こしてきた
ことが分かります。
ただ、これを予め予測できるか
といったら
非常に難しいのが
正直な所だと思います。

中垣歯科医院では、
一年に一度のレントゲン
写真撮影を推奨し、
レントゲン写真の経年比較によって、
現状を把握したり、
未来を予測したりしています。

上記のような根尖病変の
悪化に関しても、
経年比較をすることで、
その歯がどのような予後を
たどるかを推測していきます。

そして治療介入を行うことが、
行わないよりも良い結果と
なるかを十分に検討し、
根管治療の介入を行います。

この方の場合には、
自覚症状が出た時点で
根管治療を行いました。

その後の経過を示します。

2014年1月(根管治療後1年)の
レントゲン写真です。

若干オーバー根充されていますが、
根尖病変の改善が認められています。
自覚症状もありません。

田村_雄輔_5

2015年2月(根管治療後2年)の
レントゲン写真です。
根尖病変は認めず、
自覚症状もないため、
経過は良好です。

この時点では、
治療介入により良い結果
が出ているかと思います。

田村_雄輔_6

 

もう一例お示しします。

次に示すのは、
既に根管治療をされている
左下7番(第二大臼歯)の経過です。

2007年12月来院時の
レントゲン写真では、
明らかな根尖病変は認めず、
自覚症状もありませんでした。

笹井_昌樹_55

2011年6月来院時の
レントゲン写真では、
明らかな根尖病変を認めましたが、
自覚症状はないため、
患者さんと話し合いの下、
経過観察となりました。

笹井_昌樹_44

しかし、その1年後(2012年7月)には、
その部位の歯肉腫脹と疼痛を
訴えて来院されました。
レントゲン写真でも、
根尖病変は広がりを認めました。

笹井_昌樹_33

明らかに増悪傾向にありましたので、
この時点で再根管治療を行いました。

2013年11月(治療後1年)の
レントゲン写真では、
根尖病変は改善されています。
若干近心根の歯根膜腔拡大を認めます。

笹井_昌樹_22

さらに2014年11月(治療後2年)の
レントゲン写真では、
さらに
歯根膜腔の拡大があるようにみえますが、
患者さんの自覚症状もなく、
治療後まだ2年であるため、
経過観察としています。

笹井_昌樹_11

このような二例でお示し
しましたように、
根管治療を行う場合には、
経過をフォローし、
治療することによって、
治療しない場合よりも
良くなるかどうかを
十分に検討してから
行うようにしています。

 

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