2015.01.29

虫歯はどのように進行するのか?

『出来るだけ
削らないでほしい・・・』

多くの患者さんは、
虫歯で歯を削られることは
嫌だと思います。

私もできるだけ
削りたくないと思っています。

 昨日、当院では、
ウ窩の存在とレントゲン写真の
陰影がある場合には、
削ることを選択すると
書きましたが、
実際には、
削るか削らないかの判断は、
非常に難しい場合があります。

私は、虫歯を削り修復するか
どうかの判断に直面した場合には、
常に自分に対して、
ある問いかけを行うようにしています。

その1つが、
『もし、何もしなかったら
どんなことが起こるのだろうか?』
というもの。

この問いは、
私達が医療行為を行う上で
非常に重要だと思います。

自分が行う介入が、
何もしなかった場合よりも、
その患者さんにとって
良い結果が得られるかどうか
を考えるために必ず必要となるからです。

『もし、何もしなかったら、
どんなことが起こるのだろうか?』

今日は、この問いについて
考えていきたいと思います。

意外かもしれませんが、
医療者は、病気の
自然経過をあまり知らない
と言われることがあります。
その病気を放っておいたら
どうなるかということです。

医療者は、病気を発見した時点で
治療介入をすることが多く、
治療した場合の様子を
診ていることが多いからです。

虫歯の場合を考えてみます。

虫歯は放っておいたらどうなるのか?

虫歯治療を行なうときには、
私達はこのことを知らなければいけません。

放っておいたら
進行するに決まっている。
何を馬鹿なことを言っているんだと
怒られそうですが、
そこまで単純なことではありません。

自分たちの介入が特に、
削って修復治療をするような、
患者さんにとって
リスクのある治療の場合には、
その行為が患者さんにとって、
何もしないよりも
良い結果をもたらすかどうか
を十分に考える必要があります。

そのために、虫歯がどのように
進行するのかを知らなければ
いけないということです。

臨床的あるいは
レントゲン写真により、
最初に小さな虫歯が
認められたときには、
すでにその虫歯は、
長い間口腔内や
レントゲン(X線)写真で
気付かれないまま
進行し続けていたこと
を意味しています。

虫歯が始まったところから、
臨床的にまたはレントゲン写真上、
目で見て分かるようになるまでに
長い時間がかかっています。

その虫歯が発見された時点から、
そこで進行を止めたり、
慢性化させたりできます。

 しかし、そこからさらに
進行することもあります。

その虫歯が小さく
ウ窩となっていなければ、
進行を遅くすることができます。

では一般的に虫歯は
どのくらいの速さで
進行するのでしょうか?

この問いに対して、
27歳までの若年者を対象にして、
虫歯がどのくらい早く進むのかを
調べた研究が
スウェーデンで
行われました。

この研究では、
エナメル質に最初の虫歯が
認められてから、
象牙質内にそれが進行するまで、
約8年(中央値)かかり、
そこから
象牙質の厚さ1/2を超えるまでには、
約3.4年(中央値)かかる
とされています。

さらに、進行速度にとって
重要だと明らかにされたのは、
①患者さんの年齢
 若いほど速い。

②初期虫歯の存在
 患者さんに初期虫歯が多いほど
進行するリスクが高い。

③歯面
 上顎第二小臼歯の遠心面で早く、
上顎第一大臼歯の遠心面で遅い
という結果がでているが
 この理由は不明であると。

もちろん、個々の患者さんの虫歯の
リスクも検討しなければなりませんが、
私は、虫歯の修復治療をするかどうか
の判断に直面したときには、
その虫歯が修復治療をしなかったら
どのように進行をするのかを自身に問いかけ、

自分がその虫歯を削り
修復治療をした方が、
削らない場合よりも
良い結果が得られるかどうか

を考えるのです。

参考文献)

ペンクト・オロフ/ダン・エリクソン 著 西真紀子 訳.スウェーデンのすべての歯科医師・歯科衛生士が学ぶトータルカリオロジー.

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