2020.01.11

歯を削った方が良い場合もある?

できるだけ歯を削られたくない。

そうご希望される患者さんは
どんどん増えているような気がします。

歯を削ると、
元に戻りませんので、
その判断を慎重に行うことは
とても重要です。

ただ一方で、
目的を見失わないことも
大事だと思っています。

確かに歯をむやみに削ることは
良くないのですが、
削って治療する方が結果が
良いことがあるのも事実だからです。

たとえば、次のようなケース。

左上の犬歯と第一小臼歯の虫歯。

削らないで治療してください
という患者さんのご希望。

私たちは、
そのご希望を
そのまま受け入れません。

ただ虫歯を進行させない
ということが目的であれば、
削らないでも達成できるかもしれません。

ただそれでもこのままの条件で
進行させないようにするには、
相当な努力が必要です。

どんな結果を目指しているのかにも
よりますが、虫歯を治し、
失われた歯の形をきちんと回復させて、
それを良い状態で長く持たせることが
目的だとしたら、
やはりある程度削って
条件を整えてあげる方が良いかと思います。
見た目もできるだけ良くしたいのであれば、
なおさらです。

この患者さんとは、
良くお話し合いをして、
この2本の歯については、
削る治療を選択することにしました。

左上第一大臼歯の
感染歯質(虫歯になっている部分)を
取り除くと、次のようになりました。

ほとんど根っこだけのような状態に
なってしまいましたが、
歯髄(歯の神経)は露出していませんので、
歯髄は保存して、ここから修復をしていきます。

かぶせ物を入れる前の状態を示します。

手前の左上犬歯の虫歯部分も、
患者さんの了解を得たので、
黒い部分を取り除き、
修復しました。

左上第一小臼歯にかぶせ物を入れて、
2本の歯の治療は終了しました。

歯の形や機能、
衛生状態も改善され、
患者さんもとても満足されたようです。

どんな状況でも
絶対これが正しいという
一つの選択肢はなく、
削らないという、
一見正しそうな選択すら、
必ずしも正解とは限らないのです。

2019.03.15

わたしはどうしたら良いの?

「わたしは一体どうしたら良いのでしょうか?」
こう悩む患者さんが増えている気がします。

インターネットの普及により、
様々な情報が手に入るようになりました。
それに伴い、患者さんの知識レベルは
昔に比べると高くなっていると思います。

ただそれによって、
患者さんには選択肢が増えることになり、
以前より迷う患者さんが多くなったように思います。

情報があまりない時代は、
目の前の歯科医の言っていることを
信じるしかありませんでした。

今は調べたら他の歯科医の情報や患者さんの情報など、
容易に手に入れることができるようになりました。

セカンドオピニオンという言葉も普及し、
別な医師の意見を求める患者さんも増えてきました。

ところが次のように悩むことになります。

A歯科医にはこう言われたけど本当だろうか?
ネットで調べてみる。
どうも違う意見があることを知る。

だからB歯科医に意見を求めた。
そしてB歯科医にはA歯科医と違うことを言われた。

ネットで調べてみる。
どちらの意見もある。
状況によるらしい。
自分はどっちが良いのだろうか?

だからC歯科医にも聞いてみた。
C歯科医はまた別な意見を言ってきた。

みんな言っていることが違う。
ネット調べる。色んな人が色んなことを言っている。
でも自分の答えはわからない。

わたしは一体どうしたら良いんだろうか?

それに対するわたしの答え。

それは、
歯科医療の治療方針に決まった答えはないということ。
患者さん一人ひとり違うものだと考えています。
その患者さんのその時の状況で、
何が最も良いのかを一緒に決めていくしかありません。

歯科治療には、メリットがありますが、
必ずデメリットもついてきます。

だからどんなデメリットを受け入れて、
どんなメリットを手に入れていくかを決めなければならないのです。

迷った人が決定するためには、
自分の価値観や状況を考えながら、
それらの自分への影響度を整理していく必要があります。

影響度を整理するとは、
自分はどんなメリットあるいはデメリットを
重要視しているのかを見つける作業です。
それが分かると決断しやすくなり、
後悔も少なくなります。

上述したA歯科医もB歯科医も、
そしてC歯科医も、
嘘を言っているわけではありません。
だけど、それぞれが強調している部分が違うのだと思います。

どのメリット、あるいはデメリットを強調されるかで、
患者さんの受け取り方は全然変わってきますから。
でもそれはあり得ることなんです。
それは、歯科医も自分たちの価値観で話をすることになるからです。

答えを決めてほしいなら、
自分が信じれるだれかの価値観で決めてもらったら良いと思います。

でも誰を信じたらよいかわからない、
自分で答えを決めたい、
一緒に決めたいと思う場合には、
納得できる決断を支援してくれる人と決めていくと良いと思います。

一つの正しい答えはありません。
だからその患者さんのそのタイミングでの、
よりベターな答えを見つけていくしかないのです。

2019.03.14

情報を発信する立場として考えること

良い情報って何か?

この問いは、とても難しい問題だと思います。
色んな意見があると思います。

 そもそも情報っていったい何なのでしょうか?

情報という言葉の定義は、調べるとたくさんあります。
したがって、
これというはっきりとした定義をすることは難しいのですが、
調べるとこんなことが書いてあるのを見つけました。

情報とはまず、
ある内容、事柄があり
それを伝える送り手(発信者)がいて、
その内容、事柄(情報の主)が
相手(受信者)に受け取られてはじめて
情報と呼ばれる。

 だから、
その人が伝えたい内容や事柄があっても、
相手にその内容が伝わっていなかったり、
受け取られていなかったら、
それはそもそも情報ではないということらしいのです。

 つまり、わたしがここで、
良い情報とは何かについての
内容を書いていたとしても、
皆さんが受け取らなかったら、
それは良い情報どころか、
そもそも情報でもないということ。

だからまったく興味がなかったり、
面白くない情報は、
受け取られることもなく、
そもそも情報になりません。

 この日記を読んでいる方は、
ひとまず内容を受け取ってくれるという前提で、
良い情報とは何かについて書いていきます。

 わたしは、
良い情報かどうかを判断するのに、
3つの指標があると思っています。

1つ目は、その内容が本当かどうかです。

まったく正しくない内容であれば、
それはただの嘘であり、
ガセネタやデマと言われるでしょう。
だから嘘でないことはとても大事です。

ただし、正しい内容でも、
細かい数字が並んでいたりして、
その内容を理解することが難しいと伝わらず、情報になりません。

だから2つ目は、それを受け取りやすいかどうかです。
わかりやすさとも言えます。

発信者が伝えたいことが
分かりやすいということは、
良い情報の必要条件だと思います。
正しい内容でも、
それで一体何を伝えたいのかが
わからなければ良い情報になり得ません。

3つ目は、受け取った側が起こす行動が有益かどうかです。

内容が本当で、受け取りやすくても、
それを受け取った相手の行動が
不利益なものになってしまう場合には
良い情報とは言えないと思います。

 良い情報は、
受け取った相手が有益な方向に向かう
確率を高めるためのものである必要があるのです。

わたしはこの3つ目が特に重要だと考えています。
受け取った相手がどのような行動を起こすか、
それがその人にとって有益かどうかが大事だと考えています。

内容がうそではなく、
わかりやすくても、
受け取った相手が間違った行動や
不利益な行動を起こすことにつながることがあります。

 情報を発信する人間は、
そのことを十分に意識しなければなりません。

 だからわたしは、
情報を発信する場合には、
どんな人が受け取り、
どういう選択や行動をとったら、
良い方向に向かう可能性が高いのかを
ちゃんと考える発信者でありたいと思います。

 そしてもし、
情報を受け取ったけれど、
どういう選択や行動をとったらわからない、
あるいは迷っている方がいたら、
一緒に考える支援者でもありたいと考えています。

2018.08.08

価値のある仕事

今の時代、専門家でなくても、
自分の欲しい医学的、
歯科医学的専門知識について、
探せば簡単にたくさんの情報を手に入れることができます。

多くの歯科医院がホームページを持ち、
歯科医療への考え方や治療について情報発信していたり、
学会が作成したガイドラインなどもネット上で見ることができます。

つまり、歯科医療のような専門的な問題でも
探せばどこかに答えは載っているということ。

でもそれは、一般論としての答え、
あるいは、自分以外の別な誰かに対しての答え。

しかし、探している人が最も欲しいのは、
一般論や他人の答えではなく、
非現実的な理想の答えでもなく、
「私の場合はどうしたら良いのか?」という
リアルワールドにおける自分自身の最善の答えなのではないでしょうか?

そして、そのような個別の答えは、
専門的な情報だけではなく、
お互いの価値観や環境などによっても
ダイナミックに変化していくものであり、
双方向性のコミュニケーションを通してのみ得られるものだと思います。

最近では、多くの患者さんがご自分で、
あるいはご家族が様々な情報を調べ吟味し、
専門的知識のレベルが本当に高くなっていると感じます。

そんな患者さん達には、
専門的情報をそのまま提供することに
あまり価値が無くなってきている気がします。

だから私達は、
直接お会いした患者さんには、
専門的情報を一方的に提供するのではなく、
私達が持つ専門的情報やコンセプトを
患者さんの文脈につなぎ合わせ、
患者さんにとって個別で最善の答えを探していく支援をします。

患者さんの中には、
自分の答えは自分で決めたい方もいれば、
答えを決めてもらいたい方もいます。

でも実は一番多いのは、
答えを一緒に決めたいという人なのです。

どの決め方が正解ということはありませんが、
このような決め方も含めて患者さんの文脈にあった形を考える必要があります。

現在のような情報が溢れている時代でも、
患者さんが探しているのは、自分自身の答え。

そして求められているのは、
その答えに辿り着くための情報と支援。

その患者さんにとって
必要な専門的情報を分かりやすい形で届け、
さらにその先の患者さんの答えに
至るまでのプロセスを支援できることが、
私達歯科医療者の仕事として、
とても価値のあるものだと思います。

2018.03.05

自分の言葉を磨く歯科医師

私達は、人とコミュニケーションを
取るときには言葉を使っています。

 もちろんコミュニケーションには、
言葉以外で行う部分もありますが、
言葉は、人だけに使うことを許された
コミュニケーションにおける
重要な道具だと言えます。

 従って、
私達がコミュニケーションの
能力を高めるためには、
自分の使う言葉を
磨いていかなければなりません。

 しかし自分の言葉を磨くとは
どういうことでしょうか?

 それは、自分自身が、
漠然と捉えている事柄に対して、
明確に区別し、
そこに言葉を与え
思考を深めるプロセス。

 そのようなプロセスを経て、
自分が外に発信する言葉には
とても力があるように思います。

 私は歯科医師にとって、
自分の言葉を磨くことは、
治療の技術を高めることと
同じくらい重要なことだと
考えています。

 以前、患者さんの満足度は、
実際の歯科医療の内容と
歯科医療コミュニケーションの
かけ算によって決まるのではないか
と書きましたが、
歯科医師にとって、
自分の言葉を磨くことは、
歯科医療コミュニケーションレベル
を高めるための基礎トレーニングに
あたると考えています。

 これは、スポーツをやる上での
筋トレみたいなもの。
どんなスポーツをやるにせよ、
プロ選手ならば必ず必要な筋肉を
鍛える努力をすると思います。

 しかし、歯科医師が
コミュニケーションレベルを
上げるために行う自分の言葉を
磨く努力は、あまり一般的では
ないかもしれません。

従って、こんなことを深く
意識することも少ないかもしれません。

 ただ私は、歯科医師にとって
自分の言葉を磨くことは、
臨床の現場で本当に役立つと
実感しています。

 自分の言葉を磨いていると、
患者さんやスタッフの
抱えている漠然とした
悩みや問題に対しても、
言葉として明確に区別する
ことができるようになります。

 言葉として、
明確に区別することができると、
その悩みや問題の解釈のズレを
防ぐことができますし、
その悩みや問題が明確になる
こと自体が、
信頼関係を築く
きっかけにもなります。

 例えば、患者さんのお話を
聴いているときに、
患者さん自身も抱えている
悩みや問題が明確でないことや、
どう言葉で表現して良いかが
分からないというような場合があります。

 そんなときに、
患者さんの話を良く聴き、
患者さんの言いたいことを
私達が明確に区別して
適切な言葉として
表現することができると、
患者さんからしたら、
「それそれ!、そういうこと!
この歯医者は分かってくれる!」
となり、信用が高まることもあります。

 磨かれた自分の言葉は、
優しいだけや、上辺だけの
軽い言葉ではなく、
自分の本心から発せられる
力のある言葉であり、
そのような言葉は、
周囲の人達の行動に繋がる
影響力を持つのだと思います。

自分の言葉を磨き、
その成果を実感するには
時間がかかります。
少しずつ少しずつ
磨き続けていかなければなりません。

でもその努力を続けることによって、
歯科医療のコミュニケーションの
レベルや安定感が増していくのではないでしょうか。

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